【大好き】エピローグ 世界で一番幸せな二人
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ある日の昼休み、屋上庭園に藤堂と早坂の姿があった。
庭園は改装され、石畳が敷かれていた。今では社員であれば誰でも入れるようになっており、石畳の白いところだけを歩くといいことが起きるという噂で、若い社員たちの人気のスポットになっていた。
「えへへ……準さん。白いところだけを歩きましょうね~」
早坂はあの日のように、石畳の白いところを選んで歩く遊びをしていた。
藤堂は早坂の変わらぬ無邪気さに、いつものように温かな気持ちになった。
「もちろんだよ。でも真、私にはもう十分いいことが起きているんだ。だって……」
藤堂は早坂の手を優しく握った。
「真と出会えて、結婚できて、毎日一緒にいられるんだから。これ以上の幸せなんて、あるのかな」
二人は白い石畳を選びながら、ゆっくり歩いていく。
「僕は世界で一番幸せです。これ以上の幸せなんてないくらい」
子供のように無垢な笑顔を見せる早坂を見て、藤堂も目を細める。
「私もだよ、真」
初冬の澄み切った青空の下、二人の温かな笑い声が響いた。
日曜日の昼下がり、二人の新居、恐竜の部屋。
母親の写真が飾られた祭壇の前で、早坂は結婚祝いに瀬戸係長にもらった恐竜のぬいぐるみで元気に遊んでいた。
藤堂はその様子を幸せそうに眺めている。
あれほど結婚に反対した藤堂の両親だったが、早坂に何度か会ううちにその幼い子供のような純粋さにすっかりほだされ、今ではまるで息子か孫のように早坂を可愛がっていた。部屋の隅に大切に置かれているパークゴルフの高級クラブは、藤堂の父が早坂に買い与えたものだった。
壁には早坂が色鉛筆で描いた幼いタッチの絵が額縁に入れられて飾られていた。藤堂はその中の一枚の前に立った。
スーツ姿の藤堂と、作業着姿の早坂が手をつないで笑っている絵。その下には『じゅんさんとまこと いつまでもいっしょ』の文字。
微笑んで、藤堂はまた早坂に視線を戻す。そして早坂の下に歩み寄り、そっと抱きしめた。
「真、大好きよりももっと大好きだよ」
「準さん、僕も! 大好きよりももっと大好きです!」
藤堂に頭を撫でられて、早坂はくすぐったそうに笑った。藤堂は嬉しそうにうなずいた。
これは、立場の違いも障害も偏見も乗り越えて、世界で一番幸せになった二人の物語。
これからもずっとずっと続いていく物語。